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文献紹介 ライソゾームの機能不全はマクロファージの遊走能を障害し,結核菌に対する易感染性をもたらす
田中 千尋
1
1慶應義塾大学
pp.542
発行日 2017年6月1日
Published Date 2017/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205146
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結核菌は肺胞上皮から侵入した後,肺胞マクロファージに貪食される.貪食後,周囲から新たなマクロファージが動員され,肉芽腫を形成し,結核菌を隔離する.このとき,動員されるマクロファージが欠乏していた場合,肉芽腫は形成不全に陥り,感染が拡大する.このようにマクロファージの遊走能は肉芽腫形成に重要であることはわかっていたが,その詳細なメカニズムは不明であった.BergらはゼブラフィッシュのMycobacterium marinum感染モデルを用いて,ライソゾームの機能異常がマクロファージの遊走能を障害し,結核菌に対して易感染性となる機序を解明した.
BergらはM. marinumに易感染性をもつSnapc1b変異型ゼブラフィッシュを作製した.変異型と野生型ゼブラフィッシュのマクロファージの形態を比較した結果,変異型は大型化,空胞化し,遊走能が低下していた.アクリジンオレンジ染色ではマクロファージ内にデブリが蓄積していた.さらに,M. marinum感染モデルのマクロファージにおいても遊走能の低下,肉芽腫の形成不全を確認した.Snapc1bの転写産物の中に,ライソゾームに関連するcathepsin B,L1が同定された.実際に,システインプロテアーゼ阻害薬E64dでcathepsinを不可逆的に阻害したマクロファージは空胞化し,遊走能が低下していた.さらに,変異型マクロファージと同様の変化が,ライソゾーム病のモデルフィッシュにおいても確認され,これらの疾患でもM. marinumへの易感染性が生じることが判明した.
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