講座・リンパ球の検査・9
白血球・マクロファージ遊走性リンホカインの測定法
平島 光臣
1
,
吉村 禎造
1
,
壬生 靖大
1
Mitsuomi HIRASHIMA
1
,
Teizo YOSHIMURA
1
,
Yasuhiro MIBU
1
1熊本大学第1病理学講座
pp.1068-1073
発行日 1984年9月15日
Published Date 1984/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912295
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はじめに
ケモタキシスとは,細胞が化学物質の濃度勾配に従って,一定方向に運動性を示すことを指し,方向性を示さない細胞の運動,すなわちケモカイネシス(random migration)と明らかに区別される.さて,白血球はこのケモタキシスによって炎症局所に選択的に動員され,その機能を発揮すると考えられる.そこで,いくつかの生体防御機構の中でも重要な基本反応の一つと考えられるケモタキシスの機構を解明することは,免疫反応を含む多くの病態解明の一手段として非常に重要であると考えられる.
さて,ケモタキシスを引き起こす物質,すなわち遊走因子は,現在まで数多くの物質が報告されている.それら多くの遊走因子の中で,リンパ球由来の物質,すなわちリンホカインも遊走因子としての確固たる位置を占めている.現在まで臨床検査において検索されることが多かったのは,患者の白血球の機能測定の一つとして,細胞の遊走能の検定や血清成分によるケモタキシスの抑制または亢進などであった.しかしながら,われわれの実験でも明かなように,T細胞機能の検定もこの細胞による遊走性リンホカインの産生という面から解析が可能と予想される.すなわち,遊走性リンホカインの産生調節機構を明らかにすることによりT細胞の機能発現の調節機構の解明にきわめて有用な手段が提供されると思われる8〜11).
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