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文献紹介 ミトコンドリア機能不全は特殊な蛋白分泌現象を伴う細胞老化を誘導する
藤田 春美
1
1慶應義塾大学
pp.590
発行日 2016年7月1日
Published Date 2016/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204834
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細胞老化とは,正常細胞において,細胞分裂の繰り返しや酸化ストレス,がん遺伝子の活性化など種々のストレスで誘導される,不可逆的な細胞増殖停止状態である.老化細胞では,老化関連β-ガラクトシダーゼ(senescence-associated β-galactosidase:SA-β-gal)活性の上昇や,老化関連分泌現象(senescence-associated secretory phenotype:SASP)と呼ばれる炎症性蛋白の細胞外分泌が認められる.以前より,ミトコンドリアの機能不全が細胞老化を誘導することが知られていたが,本研究によりその分子基盤の詳細が明らかになった.
著者らはヒト線維芽細胞を用いて,ミトコンドリアDNAを欠損させたり,電子伝達系阻害剤を添加するなど,様々な方法でミトコンドリア機能を障害したところ,細胞増殖停止やSA-β-gal活性上昇など細胞老化特有の表現型が現れることを確認した.著者らは本現象を「ミトコンドリア機能欠損に伴う細胞老化(mitochondrial dysfunction-associated senescence:MiDAS)」と定義した.これらの細胞はIL-10を発現し,典型的SASP因子であるIL-1,-6を発現しないなど特徴的なSASP(MiDAS-SASP)を示した.また,ミトコンドリアDNAに高頻度に変異が蓄積されるPOLGD257Aマウスの体細胞においても,細胞老化とMiDAS-SASPが確認された.
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