Japanese
English
原著
興味ある組織像を示した陰茎癌の1例
A Case of Penis Carcinoma Revealed Peculiar Histopathologic Findings
北村 啓次郎
1
,
田村 晋也
1
,
木村 俊次
1
,
籏野 倫
1
,
杉浦 丹
2
,
中村 絹代
3
Keijiro KITAMURA
1
,
Nobuya TAMURA
1
,
Shunji KIMURA
1
,
Hitoshi HATANO
1
,
Makoto SUGIURA
2
,
Kinuyo NAKAMURA
3
1慶応義塾大学医学部皮膚科教室
2川崎市立川崎病院皮膚科
3北里研究所附属病院皮膚科
1Department of Dermatology, Keio University School of Medicine
2Section of Dermatology, Kawasaki City Hospital
3Section of Dermatology, Kitazato Institute Hospital
pp.639-645
発行日 1979年7月1日
Published Date 1979/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202090
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61歳男子の陰茎亀頭尖端,外尿道口を含む部位に誘因なく3〜4年前から紅色肥厚症様紅斑を認め,約1年前からびらん形成,さらに病巣内に結節を生じるとともに急激に鼠径部リンパ節へ転移し,遂には全身転移のため死亡したと思われる例を報告した.
本例はその現病歴および初診時臨床像に注目して紅色肥厚症が浸潤癌となり全身に転移したものと考えられた.しかるに組織学的に紅色肥厚症としての所見に乏しく,腫瘍細胞の主体は脂肪染色弱陽性の澄明細胞であったため診断が容易でなかったが,電顕的に腫瘍細胞内にトノフィブリル,デスモゾーム様構造が認められたこと,主腫瘍に連続した辺縁部表皮が肥厚し,そこにdyskeratosis, abortive squamous pearl-like formationを伴う表皮内癌の所見が見られたことより,本例は陰茎の未分化扁平上皮癌と診断された.また確証は困難であり,当初から陰茎癌であったとする考えも否定し得ないが,上記所見を根拠に本例を紅色肥厚症より進展したものと推論することもできる.紅色肥厚症が全身転移して死亡した例は極めて稀と思われる.
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