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近年,膠原病においては,臨床所見,血清免疫学的所見,病理組織所見等の知見が蓄積されるにつれ,各膠原病の鑑別が比較的容易になされるようになってきたが,それとともに各膠原病の重複や移行型あるいは不全型といった病像が認められ問題とされるようになってきた.この中で代表的なものが1972年,Sharpら1)の提唱したmixed connective tissue disease (MCTD)なる疾患概念であり,その場合,ことに抗RNP抗体価が問題になる.西川氏らは「強皮症および類縁疾患におけるIn—vivo bound immunoglobulinsと抗核抗体」(本誌,32(11);973,1978)の中でWinkelmannら2)のいうme—senchymal sclerodermaをとり上げ,皮膚科的な立場から診断する際都合がよいとしている.当科においても従来汎発性鞏皮症と考えられていた症例の一部に抗ENA抗体価からみてMCTDないしmesenchymal sclero—dermaと考えられる症例をみている3).西川氏らのme—senchymal sclerodermaで表皮細胞核あるいは基底膜に免疫グロブリンの沈着をみた事実は,さきにGilliamら4)も認めており,なお不明確である本症の鑑別,ひいては独立性に大きな意味をもってくるように考えられる.さらに氏らは,それら免疫グロブリンの沈着は抗RNP抗体と密接に関連しているという興味深い事実を示した.このことはGilliamら5),Prystowsky6)らによっても推定されていることであり,ribonuclease処理を含む比較的繁雑な方法で検出される抗RNP抗体が,生検皮膚の螢光抗体直接法で比較的容易に検出される可能性を示すとともに,かりに表皮細胞核に沈着する免疫グロブリンの主体が抗RNP抗体であるならば,そうした抗原部位の検索を通してMCTDないしその類縁疾患の発症機序を解明する手段となり得るものと思われる.しかしながら表皮細胞核と反応する抗RNP抗体の臨床的意義に関して,さらに詳細な検討が望まれる所である.
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