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The characteristic skin lesionsassociated with tuberous sclerosisis, a. adenoma sebaceum, b. cafe—au-lait spot, c. portwine stain, d.fibroma molluscum, e. Hea-bitepatch,以上は米国のmedical boardの試験問題集にあつて,『正解はd.になつているが,a.ではなかろうか?』という質問がよせられた由である.***この試験問題のように正解が多少明確でないことを問う場合は,○×式でなく,論述式に書かせた方が受験者の知識を詳かに評価できるかと思う.***全身病としてよぶ場合には,van der Hoeve1)の提案を少し変えてBournevme-Prin-gele母斑症2)(以下,本症)とよび,tuberous sclerosisは脳病変ないし脳症状のよび名とした方がすつきりすると思う.近時米,英のものをみるとtuberous sclerosisという術語を全身病のよび名に用いている場合が少くないが,まぎらわしいから感心できない.***本症の顔面皮診をadenoma sebaceumと呼ぶことは,Pringleがこれをadenomes sebac—ees (Balzer)すなわち多発性毛嚢上皮腫と同じと考えたことに由来すると聞いた.その後両者の異同をめぐつて論議が長く続いた.その一端は,Darierの教科書(1928年版)で,adenomes sebacee symetriquede la faceの中にtype Balzer, typePringle,type Hallopeau-Leredde—Darierの分類(文献2,174頁,第19表参照)を設け,多発性毛嚢上皮腫はtype Balzerと共通するものとしていることでもわかる.***『本症の一次的病変は(皮膚及び腎臓の病変をふくめて)間葉発生障害による異型の増殖であることを1957年明記しておいた(文献2,200頁).此の考えは文献3を経て,Rook4)(1972)に伝えられてはいるが,その間Montgomery5)(1967)がNickelら(1962)の業績によつてはじめて,adenoma sebaceumがvascular andconncctive tissue tumor,a hamar—toma in which sebaceous glandsare only passively involvedという観点に達したことを知り,自説を反覆主張することに不熱心であつたことを反省した.***Lever6)もNicke1らを引用して,本症の三主徴としてmental deficiency, epilepsy andangiofibroma (mistakenly calledadenoma sebaseum of Pringle)をあげている.試験問題のfibromamolluscumは,本症と無関係にも見られるが,本症にも屡々見られるから,これを正解とすることも間違いではなかろう.しかしながら,最近のDomonkos7)(1971)の教科書でも,組織所見はNickelの所見をとりいれながらも,標題はadenomasebaceumをとつている.このような次第であるから,出題者が本症の本態乃至顔面皮診の組織像についての知識を試したかつたのなら,seb—aceous adenomaとでもしておいてくれたらよかつたと思う.***Pha—komatosis (母斑症)という術語は語源的に正しくないとするものもあるが,Websterの辞典8)をみると,GK phak—,phako—,fr.phakos lentil(レンズマメ),object shapedlike a lentil,mole,wartとある.従つてvan der Hoeve1)の"a pha-kosis a naevus without naevusrcells;a naevus is a phakos withnaevuts-cells"(文献2,3頁参照)といつたことも,あながち間違とはいえまい.
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