〈原著論文抄録〉
著明な皮膚症状を示した特発性副甲状腺機能低下症,他
平野 京子
1
1杏林大学皮膚科教室
pp.1057
発行日 1972年11月1日
Published Date 1972/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412201073
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既往症にマラリア,現症歴に白内障,変形性股関節炎,癲癇様発作を持つた51歳男子症例で,約7年来,癲癇として治療されていた.昨年春発作の頻発した頃より,頭部および腋毛の脱毛,爪甲の粗糙化とともに,瘙痒を伴つて,顔面を除くほとんど全身の紅斑びらん落屑性の,剥脱性皮膚炎様の皮膚症状を来してきた.臨床諸検査の結果,特発性副甲状腺機能低下症と診定.Vit D2およびグルコン酸カルシウムの投与により,発作は翌日よりまつたくなくなり,皮疹も急速に著明に軽快し,軽度の色素沈着を残すのみとなり,頭髪,腋毛も再生されてきた.
本疾患の皮膚科的記載のほとんどは,皮膚の乾燥粗粗,脱毛,爪甲の変化などであつた.本症例のごとき著明な皮膚症状は本邦においては初の報告例であり,文献的にも3例ほどで,稀有であつた.なお,本疾患の病因論としては,現在のところ不明であるが,一方においては,臓器特異性自己免疫疾患との見解を支持する研究も打ち出されている.
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