〈原著論文抄録〉
角化母斑の特異型—光顕的ならびに電顕的観察,他
広根 孝衞
1
,
鍛冶 友昭
1
,
川田 宗弘
1
,
藤田 幸雄
2
,
福代 良一
1
1金沢大学医学部皮膚科学教室
2藤田病院
pp.866
発行日 1972年9月1日
Published Date 1972/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412201046
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金沢大学皮膚科において観察した角化母斑の特異型8例の組織像とその1例の電顕像について述べた.組織像は全例に共通で,角質層の顕著な肥厚・表皮細胞の空胞性変化・細胞質の顆粒変性・ケラトヒアリン顆粒の粗大化を特徴とした.電顕的観察により,表皮細胞の空胞性変化は細胞内の浮腫性変化であること,顆粒変性の本態はトノフィラメントおよびその束の形成異常であること,またケラトヒアリン顆粒の粗大化は顆粒の母体であるトノフィラメント束の形成異常に続発した二次的変化であることを明らかにした.また,角質の微細構造にも顕著な異常があり,角質層では比較的よく角化した細胞層と角化の不完全な細胞層が交互に重積,前者は均質な角質から成り後者は不規則に配列したトノフィラメント様細線維やトノフィラメントの凝集塊様均質塊などから成ること,またこれらの角質細胞間にほぼ正常構造を保つたデスモソームが,まれならず存在することを明らかにした.角質に関するこれらの所見から,本症における角化不全の要因は恐らく周期的に変動するものと推測された.なお,本症と先天性魚鱗癬様紅皮症およびisolatcd epidermolytic acanthomaとの関係について考察を加え,さらにこれら一群の疾患と同じ範疇に入るべき播種型の存在を示唆した.
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