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I.緒言
下腿潰瘍は一般に,原疾患によつてその発生機構も当然異なつて来る。例えばLeu1)によれば,下腿潰瘍を伴う疾患として,1)静脈疾患,2)動脈疾患,3)動静脈短絡,4)毛細血管の疾患,5)細菌性疾患,6)真菌性疾患,7)淋巴管の疾患,8)神経栄養障害性疾患,9)血液疾患,10)巨脾症,11)強皮症,12)慢性の瘻孔を形成する疾患,13)良性腫瘍および悪性腫瘍,14)各種の系統的疾患,などの14項目があげられており,しかもそのいずれの場合にも潰瘍の臨床形態はかなり類似しているという。さて,本症の治療に際しては,潰瘍そのものにたいする局所療法のみによつて根治させることは多くの場合困難で,原疾患にたいする根本的治療が不可欠のものである。従つて下腿潰瘍を診た場合,その原疾患を正しく診断することが最も必要となる。それには,潰瘍部の組織学的検査を始め,細菌学的あるいは真菌学的検査などが一般にあげられている。しかしながら,われわれが日常外来において遭遇するのは,静脈ないし動脈の疾患に起因して発生する例が多い1)。これらの脈管性下腿潰瘍例においては,局所を中心とした血管造影法によつて始めて原疾患が正しく診断され,適切な治療法が構じられることとなる。すなわち,血管造影法は本症の診断,ひいては治療に大いに役立つている。
今回われわれは,ほぼ同様の臨床所見を呈した下腿潰瘍例2例を経験した。われわれはこれら症例について上述の血管造影法を実施し,それぞれ稀有なる成因によることを初めて明らかにすることが出来た。すなわち,1例は先天性動静脈瘻による下腿潰瘍,他の1例はベーチェット病に合併した深部静脈血栓症による下腿潰瘍の2症例である。以下,これら2症例につき述べ,文献的考按を加えたい。
Case 1 : A 33-year-old man, the second reported case of congenical arteriovenous fistula in Japan, showed a murmur and pulsation on the affected leg. The arteriogram was typical and showed cystically enlarged abnormal arteriovenous anastomoses.
The ulcer was cured rapidly by the operation to close the fistula,
Case 2 : A 31-year-old man of Behçet's disease had stasis ulcer. The venogram revealed thrombosis of the femoral and axillary veins. He had varicose veins over the entire body surface as well as the typical symptoms of Behçet's disease.
Adrenocortical steroids showed beneficial effect on the ulcer. This was the second reported case of stasis ulcer due to deep venous thrombosis in Behçet's disease.
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