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I.はじめに
エリテマトーデスの病変の場である血管についての電顕的研究は急性型で腎糸球体の病変について行われ,その変化は内被細胞の膨化と増殖および基底膜の肥厚とその部へのfibrinoidの沈着として報告されている。皮膚の血管病変としては,先に報告した如く,腎と同様に内被細胞に細胞1つ1つを単位としておこる種々の程度の膨化と増殖で,基底膜もまた肥厚している。全身臓器の侵襲を欠き皮膚のみを侵す円板状エリテマトーデスでの皮膚の変化は組織学的所見では表皮の変化および血管周囲の細胞侵潤が急性型と異なつているが血管の拡張,出血像は常に認められ,病理標本から両型を鑑別することは不可能な事がある。これは組織化学的,皮膚顕微鏡的観察においても同様であつて急性型と慢性型との間には質的な差はなく量的な変化があるのみとされている。かかる観点から慢性円板状エリテマトーデスの血管の微細像を観察した際,血管内被細胞内に多数のDense bodyの存在が認められた。炎症におけるlysosomeの役割は最近重要視され,実験アレルギーではArthus現象でimmune complexを貧食した白血球内のlysosomeが崩壊し,多くのAcid hydrolaseを放出し,これが強いアレルギー性炎症を惹起することが知られている。膠原病の内ではリウマチ様関節炎で関節液内の白血球がRA因子を貧食し,lysosomal hydrola-seの放出がおこり,これが炎症をおこし,同時に関節液中ではこれらの酵素活性の上昇が認められている。エリテマトーデスにおいてはこの疾患によく見られる光線過敏性が紫外線によるlyso-somal enzymeの放出に由来する可能性がBa-er1)により指摘された。これは,lysosomeが紫外線によりその膜を失うこと,およびこの変化がクロロキン,副腎皮質ホルモンにより防止出来ることから考えられている。エリテマトーデスでは上記薬剤が有益な治療薬ではあるが,実験アレルギー,および関節炎とはことなり白血球反応を伴うことが少ないのでlysosomeを有する細胞として白血球を考えることに難点がある。かかる点で病変の場である血管内被細胞の変化とその内に多数存在するlysosomeの問題を考えて見たい。
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