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アトピー性皮膚炎がどうして発生するかということについては,既に多くの人によつていろいろな考えが述べられているが,未だにはつきりした結論は下されない現状である。本症が気管支喘息,アレルギー性鼻炎,枯草熱と共にアトピー性疾患に属することは衆知の事実であり,血中抗体としてレアギンの存在が認められるが,即時皮内反応で陽性を示す食餌や環境抗原がアトピー性皮膚炎を起す直接の原因でないことが多く,抗原を除去しても皮膚炎は軽快しないのが普通で,アトピー性皮膚炎の発生病理にアレルギーがどの程度関与しているかという疑問を誰もがいだくわけである。われわれは昭和23年から小児乾燥型湿疹の研究をはじめ,この疾患がアトピー性であることに気付き,その発生病理を考究するうちにアトピー性皮膚炎についても研究するようになつて今日に及んでいるが,われわれの考えるアトピー性皮膚炎の発生病理をここに述べて,御批判を頂きたいと思う。
小児乾燥型湿疹については今までにも東京地方会でも述べ1),日本皮膚科学会雑誌2)などにも掲載したので御存知の方が多いことと思うが,はじめ北村包彦先生はいわゆる小児湿疹のなかに皮膚が乾燥した痩型の幼小児の躯幹を主として粟粒大小丘疹が集簇して局面をなし,湿潤することなく,瘙痒の劇しいものがあるのに気付き,小児湿疹の1型として局面性苔癬状落屑性湿疹と命名して,その存在を提唱され,そして引つづき研究を進めるよう命じられた。さてはじめのうちは本症がどのくらい症例が見られ,そして臨床的に小児湿疹の1型といえるかという点を調べたが,目がなれてくるとかなりの数の症例があつまり,昭和30年度には55例,外来患者の0.42%小児湿疹の8.8%を占めた。そして昭和23年から昭和30年までに138例の本症があつまり,これについていろいろ経過を見ながら検査をするうちに特に目立つたことは発病は0〜3才までにそのほとんどが発病し,病院に受疹するものは0〜6才までが大部分を占め,症状の悪化するのは秋から冬のはじめで,冬中つづいて翌年春になつて軽快する例が多く,そして夏でもよく見れば多少丘疹が見られるが,ほとんどの例で夏は冬に比して軽く,瘙痒を訴えないことや,皮疹の性状は粟粒大の個疹が融合せず,ほぼ一定の間隔を保ち集簇して局面をなすが,時に局面が不明瞭で播種状に生じた例もあり,この間に移行が見られ,その後病名について,必ずしも局面をつくらぬこと,また病名が長いため一般に使うときに覚えにくい点を考慮し,乳幼児の湿疹が普通湿潤傾向が強いのに反して,本症は乾燥して湿潤しないことが最も特徴的である点を強調して小児乾燥型湿疹あるいは小児湿疹,乾燥型と呼ぶようになつた。そしてスンプ法で検査すると大部分の丘疹は中心に毳毛を認め,毛嚢一致性であることが分つた。また組織学的にも毛嚢を中心に海綿状態や小水庖が見られ,真皮ではリンパ球性細胞浸潤を認めたが,ここで問題になるのは臨床的に全く湿潤傾向がないのに組織像で表皮内小水庖が見られたことでわれわれは掻破などによる二次的湿疹化も考えたが,むしろ滲出傾向が少いためにすぐ乾燥してしまい,臨床的に湿潤しないと考えて,組織学的にも湿疹の範疇に入れて誤りでないとした。
1) Atopic dermatitis has been regarded as an allergic skin disease by many dermato-logists, and has been classified into the atopic diseases such as bronchial asthma, hay fever and allergic rhinitis. But in most of the cases, their skin manifestations are failed to be induced by food or environmental allergens which showed positive reaction by intradermal test.
2) Results of tests for physiology and function of the skin in the dry form of infantile eczema were essentially the same as those of the atopic skin. The former should be a type of atopic dermatitis in infant.
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