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10年以上前から医学部1年生と一緒に医学史を学んでいる.24のテーマを私が設定してそれを学生が調べ,1回2テーマずつをパワーポイントにまとめて,1テーマにつき質疑応答を含めて45分間で発表する授業形式をとっている.学生たちは医学に関することに初めて触れる機会なので,皆,目を輝かせて発表を聴いている.開講当初は,数少ない医学史の本を探したり,関連書籍を図書館で借りたりしながら学生たちは課題をこなしていたが,最近ではもっぱらインターネットで探しているようだ.確かにカビ臭く小さな活字の漢字だらけの参考書籍は敬遠しがちになろう.そのため豊富な画像をカラーで掲載している書籍を待ち望んでいたところであるが,最近そのような要望に応えてくれる書籍が出版された.それが,『Medicine――医学を変えた70の発見』である.
これまでの医学史の本は,時系列にそった記述に終始しがちであったが,本書は,古代の医学(エジプト,中国,インドなど)における身体のとらえ方から,現代の最新医術までを医療機器,疫病,薬,外科技術,予防など7つの章(70項目)に分けてわかりやすく解説している.特徴は切り口が斬新なことである.その理由は,医学の長い歴史を,単に時系列によるのではなく,その多様なテーマを上手に7つに分けて,テーマごとに一連の流れを作って描き出しているからである.それゆえ読者は,本書を読むことで7つの視点で7回医学の歴史を振り返ることができる.そして,何よりも幅広い時代・地域から集められた豊富な図版が382点もオールカラーで掲載されているのがうれしい.原書は美術書のように分厚くて重かったが,翻訳版の本書は薄い紙を使って表紙もソフトカバーになり,携帯しやすくなっている.
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