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文献紹介 IRF8遺伝子変異によるヒト樹状細胞免疫不全
和田 直子
1
1慶應義塾大学
pp.222
発行日 2013年3月1日
Published Date 2013/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103576
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IRF8(interferon regulatory factor 8)はMHC class I遺伝子プロモーター領域に存在するinterferon consensus sequenceに結合する分子として1990年単離され,その後IRF8欠損マウスの解析からIRF8は樹状細胞(dendritic cell:DC)の分化に関与しDCにおいてIL-12の転写を誘導すること,IRF8欠損マウスはマイコバクテリアの易感染性をきたすことなどがわかった.著者らはヒトにおいてもIRF8を原因にDCの機能異常が引き起こす免疫不全の病態があることを予測,播種性BCG感染症患者を精査した.
1例目は重篤な播種性BCG感染症をきたし治療に造血幹細胞移植を要した乳児である.FACS解析の結果,末梢血中にDC,monocyteが存在せず,組織中macrophageは少数,Langerhans細胞は正常数であった.IRF8遺伝子の解析から1アミノ酸変異(K108E)が判明,この変異によって患者IRF8のDNAへの結合,IL-12転写機能が顕著に障害されていることがわかった.次に,メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(原発性免疫不全症の1つでBCG,非結核性抗酸菌,サルモネラなど細胞内寄生性細菌への易感染を特徴とする)と診断された患者454人のIRF8遺伝子を解析し,2名に変異(T80A)を見つけた.この変異ではDC,monocyteの全体数には明らかな異常はないが,CD11c+CD1c+DC分画が減少しており,マイコバクテリア易感染の原因と考えられた.本論文はDCの障害を原因とする免疫不全症の初めての報告である.
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