- 有料閲覧
- 文献概要
正確には診療情報提供書というが,日常的には紹介状と呼んでいる書類がある.言うまでもなく,紹介元の医師から紹介先の医師へ当該患者の診療情報を伝える書類である.しかし最近感じることであるが,はたして紹介状とは診療情報を伝えるだけのものであろうか?
確かにそこに書かれている内容は患者の診療情報であることには間違いないが,同時に行間から読み取れる紹介元医師の気持ちや態度を伝える(「が伝わる」といったほうがよいかもしれない)ものではないであろうか.人として他人に依頼事をするときの紹介先に対する姿勢である.また,自分ではこれ以上の診療は難しいが,できる限りのことをしてあげようという患者に対する気持ちも現れるものである.しかし,なかには悪く解釈すれば「わからなければ紹介すればよい」「紹介状を持たせれば受け入れてくれるだろう」ともとれる紹介状を目にする.俗な言い方をすれば,「丸投げ」である.極端な例を挙げれば,「現病歴:数年前からあるそうです.現症:背部の黒色結節.御高診をお願いします」というような紹介状もある.これでは,何を鑑別として考えたのか,何のための紹介なのか,全くわからない.忙しい診療のなかではそのような文面になりがちなことも十分理解できるが,釈然としないものである.一方,「黒色結節でしみ出しもあり,増大速度も速く,悪性黒色腫も鑑別として考えます.小さな病変ですが,全身精査やセンチネルリンパ節生検などが必要と考え,紹介させていただきます」というような書き方の紹介状をみれば,紹介元の先生は精一杯考えて,そのうえで目的もはっきりさせて紹介してきているという気持ちが伝わってくる.受ける側も気持ちよく診療を引き継ぐことができる.紹介状は情報だけではなく,送り出す紹介元医師の紹介先の医師および患者に対する気持ちを伝える「手紙」である.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.