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数年前にドイツに留学していたころ,日本とのいくつかの違いに気づいたので挙げてみたい.その一つが「清潔」に対する感覚である.日本人は世界的にみても風呂好きであり清潔を好む国民であると自覚しているかと思うが,同じ清潔を好むドイツ人とは感覚が異なる点がある.まずはスリッパである.近年ではドイツでもきれいな絨毯が敷いてあったりすると靴を脱いで生活したり,また他人の家に入るときに靴を脱いで入ることがある.しかしスリッパはない.他人の履いたスリッパを,自分が靴下の上から,または素足で履くということに抵抗があるのだ.私はそのことにはっと気づき,帰国後は温泉旅館などスリッパの共用には違和感を生じるようになった.この生活習慣が日本人の足白癬の感染拡大に一役買っている可能性がある.また,ドイツ人は湿気にとても敏感である.私がアパートを借りる際,家主からカビには気をつけてくれと言われていた.月に一度,清掃会社が自宅の掃除をして異状があると家主に通告されるのだが,ある日一枚の注意書きが自宅に置いてあった.よく読んでみると,どうもカビが生えているというのだ.どこなのだ?と思い,家主に聞くと,風呂場の窓枠のパッキンのほんの数ミリの1つの黒点を指差して,こういうカビを生やさないように!としっかりと指摘された.確かに留学先の大学はとてもきれいであった.日本であればまったく見逃される程度のものである.帰国後,ふとあちこちの施設や勤務先の窓枠を見ると,びっしりとカビが生えている.帰国後しばらくはこうしたものが気になっていた(今はまた慣れてしまったが…).
最近,外来にイタリア人がしばしば点滴にくるのだが,彼は必ず椅子に座ったまま点滴をする.その理由は,日本の病院の外来のベッドはシーツを毎回交換しないからだそうだ.イタリアでは診察ごとにシーツを交換するという.そういえば,ドイツの病院では,患者が退院するとベッドごと地下の滅菌室に移動させ,すべてを滅菌後,ベッドごとビニールに覆われて病室に戻ってきていた.皮膚疾患には湿気や不衛生によって影響を受けるものがあるが,生活習慣や感覚の違いによっても影響を受けているような気がする.
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