特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科における手術の危険度
咽頭
31.喉頭微細手術
福田 宏之
1
1国際医療福祉大学東京ボイスセンター
pp.145-149
発行日 2002年4月30日
Published Date 2002/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902549
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
手術用顕微鏡を用い,直達喉頭鏡下に喉頭を拡大視して喉頭の手術を行う方法を喉頭顕微鏡下手術または喉頭微細手術という。この方法は1960年代後半から盛んに行われるようになり,平野1),斉藤2)によりその基礎研究の成果とともにより普遍化された。この手術法の対象は声帯ポリープに代表される声帯の腫瘤の除去,声門閉鎖不全に対する声帯注入による声帯正中固定もしくは声帯増量,痙攣性発声障害や男性化音声などの機能性音声障害の手術的治療,早期声帯癌のレーザー手術など広範囲にわたる。しかし,普通一般的に応用されるのは声帯ポリープなどの腫瘤摘出である。この場合,声帯の発声時の動態から声帯粘膜の可及的維持ということが極めて重要であるとされる3,4)。これらのことが理解されていれば手術中における術操作のリスクの大部分は回避される。また,この手術の基本は直達喉頭鏡による喉頭展開が必須であって,この場面でのリスクも多い。次に考慮すべきは,麻酔法として気管内挿管による全身麻酔を選んだ場合で,麻酔チューブの気管への導入によるリスクもある。
術後の合併症は仮に手術そのものが完壁であっても起こり得ることであって,その大部分の原因は過剰創傷治癒による肉芽形成である。さらには予期できない瘢痕形成もある。また,一般人と異なる声の職業性の強い症例に対するリスクも考慮しなくてはならない。長期的合併症では再発があるが,これらに対しては声の衛生概念の強調が挙げられる5)。いずれにしてもこの手術は高度な機能をもつ声帯に対するものであって,単に余計なものを除去するといった単純な考え方では様々なリスクを招く危険性があることを銘記すべきである。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.