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大昔から人類は月,星,空(宇宙)をあこがれとロマンの対象としてきました。地上に存在するものにも増して,手の届かない遠くに存在するものに神秘を感じていたからにほかなりません。ところが人類は,20世紀の後半に遂に宇宙に行き地球に帰ってくることから,月の表面に足跡を印してくるという一大事業を成し遂げました。これは産業革命などとはスケールの違う人類の偉業と思います。“Fly me to the moon”が実現したわけです。それ以後の宇宙プロジェクトは科学的にも目覚ましい発展を遂げたわけですが,それと並行して商業化も進み今や衛星事業はわれわれの日常生活に結びつくものとなりました。人間の宇宙滞在時間も以前には想像もつかないレベルに達し,資金不足に悩みながらも国際宇宙基地はようやく3組目の3人組を収容できるところまできました。
そこで2001年,新世紀に入ったところで,アメリカの事業家デニス・チートーさんが2,000万ドル(24億円)でロシア船ソユーズの席を買い,一般人として(つまりミッションをもたない)約1週間宇宙へ行ってきました。極く簡単な普通の訓練を受けたといわれています。これが宇宙旅行の「はしり」とさわがれたのですが,実は日本人の秋山レポーターが,やはりロシア船に支払いをして乗り込んだことがあり,日本人の宇宙旅行としては最初でした。当時宇宙開発事業団では毛利宇宙飛行士を上げる準備に一生懸命でしたので,どうして先にこういうことをするのかとジャーナリズムのあり方に大層驚いたことを覚えています。しかし兎に角,今世紀に入っていよいよspace tourismの時代の幕が上がったと思います。最近のNHKこどもニュースで,現在国際宇宙基地滞在中の3名の宇宙飛行士と,こちらの15歳の少年とレポーターとで,face-to-faceのtele-TV communicationをしていましたが,宇宙が本当に身近になったと痛感しました。それでこれだけ宇宙旅行も現実性を帯びてきていますので,各方面でいろいろと調査を始めています。日本人3,000人余の調べでは70%以上が,3か月分の収入プラスぐらいで行けるなら行ってみたいと言っているようです。宇宙旅客機の研究は露,米,独,英,日で発足していますし,日本の研究フォーラムの試案では2016年ごろに初就航が可能ではないかとみています。将来的には1,000万円単位で世界に5万人以上の希望者があればビジネスとして成り立つとのことですが,少々「取らぬ狸の?」の気がしないでもありません。一方ロシアは,弾道飛行(ジェットの)による無重力遊泳体験の商業化を開始したようで,これは米,日でも,やろうという会社が出てくれば直ぐにでも発足できることでしょう。宇宙は近くなりにけりと感じてしまいます。
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