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I.クリニカルパスとは何か
近年,EBM (evidence-based-medicine),アウトカムリサーチ,医療機能評価,技術評価など,医療をその成果から評価しようとする動きが高まり,日本でも先駆的な病院を中心に徐々に広がりつつある。クリニカルパスもこの1つで,医療と看護の質の保証を目標としている。クリニカルパスそのものは「看護スタッフ・医師・コメディカルのケア介入を整理し,順序立て,経時的にまとめたもの」である。実際には図1のように,縦軸にケア介入事項(処置,検査,観察など実施すべきこと)を,横軸に日数(基準は入院日,手術の術後経過日,処置(例:心臓カテーテル)からの日など様々である)を取り,その升目に全てのケア介入を記したものである。こう書くと,料理書のレシピと変わらぬではないかという批判が出てくる。確かにクリニカルパスは,必要なケア介入がもれなく確実に行われるよう記載されたものである。しかし,クリニカルパスは静的なものではなく,図2に示すように,このクリニカルパスシートを作成するには,まず今までの業務分析を行わねばならない。さらに,クリニカルパスを運用するときは,ただこのクリニカルパスシート通り行えばよいのではなく,ヴァリアンスとアウトカムを測定しなければならない。ヴァリアンスとは「標準化されたクリニカルパスで,予測される結果や責任と,実際との差」といえる。ヴァリアンスは表1のように大別される。ヴァリアンス測定は手間がかかるので,クリニカルパスの全項目に対して行うのではなく,医療ケアのアウトカムに影響する項目にだけ焦点を定めればよい。こうして収集されたヴァリアンスはクリニカルパスを標準化するための指標となる。例えば,熱発のため予定日に検査ができなかったとして,その患者が糖尿病だとすれば,これは感染症を生じやすい患者の特性からきている可能性があり,同じ症例が続くなら同一疾患でも糖尿病患者群を除外基準として設定する必要がある。さらに,クリニカルパスが標準化された場合,ヴァリアンスは患者の個別性をみるのでなく,システムの改善やコスト分析に用いられる。
アウトカムには表2に示すように立場によって様々な面がある。病院経営のシステム面からはコスト,稼働率,収支差などがアウトカムとなる。医師からみると,端的にいえばアウトカムは退院基準である。看護からみると,セルフケア知識,機能的能力を評価することといえよう。アウトカムが明確にならないとプロセスも評価できない。またはプロセスだけ評価し,アウトカムに直結しないこととなる。つまり,クリニカルパスを作成し,運用することは今までの仕事を分析し,変革するCQI (continuous quality improvement)になる。
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