目でみる耳鼻咽喉科
レーザーによる結核性後鼻孔閉鎖の治療
小川 益
1
,
生井 明浩
1
,
池田 稔
1
,
山内 由紀
1
,
木田 亮紀
1
1日本大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.178-179
発行日 2001年3月20日
Published Date 2001/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902314
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結核は,第2次世界大戦後の食生活の改善,適切な対策により世界的に減少傾向であった。しかし本邦では,平成9年には38年ぶりに結核新登録患者が増加した。過去8年間に日大板橋病院耳鼻咽喉科で診断した結核症は14例である。年齢は22〜70歳(男性5例,女性9例)であった。部位別では,頸部リンパ節結核7例,耳下腺結核2例,中耳結核1例,鼻・副鼻腔結核1例,上咽頭結核2例,喉頭結核1例であった。このうちレーザー治療を必要とし有用であった症例を呈示する。
症例は57歳女性。上咽頭結核と診断後,抗結核剤(EB,INH,RFP)の内服治療を施行した。治療中に軟口蓋が咽頭後壁と癒着し,後鼻孔閉塞をきたした(図1〜3)。抗結核剤の治療完了後,レーザーにより閉塞部位の開大術を行った(図4〜7)。治療前には滲出性中耳炎も認められたが,術後治癒した。咽頭の閉鎖部位に対して鉗子操作による治療では,術中の出血が多い。また,それに対して電気凝固などを併用した場合は,術後の瘢痕再狭窄などをきたす可能性が大きい。また,耳管咽頭口周辺への影響が心配される。これに比して,今回使用したNd:YAGレーザー治療は手術時の出血が少なく,十分な術野の明瞭な確保ができた。さらに術後の過剰な肉芽形成,瘢痕再狭窄をきたさず有用であった。また術後,滲出性中耳炎をきたすような耳管機能障害は認められなかった。1年後の内視鏡所見でも再発を認めなかった。
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