鏡下咡語
「遅発性内リンパ水腫」を巡って思うこと
亀井 民雄
pp.754-756
発行日 2000年10月20日
Published Date 2000/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902253
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遅発性内リンパ水腫(delayed endolymphatic hydrops:以下,DEH)は,既に広く世界的に認知された疾患概念とみてよいであろう。私は個人的には,DEHの概念はもっと拡張されるべきだと考え,そして特発性メニエール病の多くが,実際はDEHではないかと推測しているが(耳鼻臨床93巻),ここではこのことには触れない。ここで記したいと思うのは,DEHの概念の形成の個人史ともいうべきことどもである。各々の研究論文には,多かれ少なかれ文中には表れない喜怒哀楽の歴史があり,それが研究者の人生の内面を彩っていると思うのである。
いうまでもなく,DEHはSchuknechtによって命名され,概念形成が行われた臨床的疾患単位である。1976年,このことに関する彼の最初の論文がArch Oto Rhino Laryngに発表されたとき,私は深い感動を覚えた。それは,私が長年考えあぐねた遅発性めまいの発現機転について,それまでに知られたメニエール病や内リンパ水腫の組織知見との関連において,見事な説明を提供するものであったからである。
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