目でみる耳鼻咽喉科
カテコラミン産生鼓室型グロームス腫瘍の1例
天野 肇
1
,
木村 大輔
1
,
竹下 有
2
,
星野 知之
2
1藤枝市立総合病院耳鼻咽喉科
2浜松医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.894-895
発行日 1999年12月20日
Published Date 1999/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902078
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グロームス腫瘍はアドレナリン,ノルアドレナリンの分泌作用をもつと考えられており,鼓室型はその約半数を占めているが,本邦ではその内分泌活性が証明された報告はない。今回われわれは鼓室型グロームス腫瘍の診断で手術を施行し,カテコラミン産生腫瘍と思われた1例を経験したので報告する。
症例は58歳男性で,左拍動性耳鳴で当科を受診した。鼓室前半部に赤色腫瘤が透見され,CTで同部に軟部組織陰影を認めたが骨破壊は認めなかった(図1)。純音聴力閾値,ティンパノグラムは正常であった。平成9年10月9日,全身麻酔下に摘出術を施行し,約7×6mmの腫瘍を摘出した。病理組織所見では,類円形の核と胞体をもつ腫瘍細胞が胞巣状に増殖し,腫瘍細胞間には著明な毛細血管の増生を認め(図2),免疫染色ではグリメリウス,クロモグラニンA,S-100,ビメンチンで陽性,ケラチン,デスミン,アクチン,ファクターⅧで陰性であった(図3)。電顕像では,明るい胞体をもつ腫瘍細胞内に限界膜に包まれた電子密度の高い芯を有する神経分泌顆粒を多数認めた(図4)。以上の所見よりグロームス腫瘍と診断した。
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