鏡下咡語
術後顔面神経麻痺ことはじめ
森満 保
1
1宮崎医科大学
pp.446-447
発行日 1999年6月20日
Published Date 1999/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902007
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われわれ耳鼻科医にとって,最も嫌なのは顔面神経の術後麻痺であろう。私が入局した昭和30年代には,現在よりも術後麻痺が多かったように記憶している。いつも1〜2人の術後麻痺患者が永い入院治療をしていた。もちろん純然たる手術損傷ではなく,真珠腫などで危険な状態にあった例も多かったのかもしれない。中には「2〜3人曲げたら手術も上手になるよ」と豪放?な先輩もいた。
私自身は術後麻痺だけは絶対に許せないと思っていた。ところが,入局5年目にその術後麻痺に遂に遭遇した。それは車で小1時間ほどの出先の病院で,新婚ほやほやの美人の患者であった。当時は単純な慢性中耳炎でも未だ全例ノミを使って乳突削開を行っていたが,その例は顔面神経など全く心配のない削開術で終わった。大学病院に帰って,会議に出ているときに電話に呼び出された。患者さんの顔がおかしいとご主人が言っているという。ドキッとしたが,全く顔面神経損傷など覚えがない。夜になって病院に行ってみると,やはり麻痺していた。
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