目でみる耳鼻咽喉科
鼻脳型ムコール真菌症の1例
鈴木 政彦
1
,
宮下 久夫
1
,
中村 弦
1
,
山田 麻里
1
,
内田 育宏
2
,
真栄田 宗慶
3
,
谷川 譲
4
1東京都立駒込病院耳鼻咽喉科
2東京都立駒込病院口腔外科
3中部徳洲会病院耳鼻咽喉科
4上田診療所耳鼻科
pp.164-165
発行日 1999年3月20日
Published Date 1999/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901938
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近年,感染症が増加傾向にある。真菌症も同様で,鼻副鼻腔真菌症の報告も増加しており,悪性腫瘍,血液疾患,ステロイド治療などに伴い発生しやすく,その治療に難渋することが多い。今回われわれは糖尿病に伴った,いわゆる鼻脳型ムコール真菌症を1例経験したので報告する。
症例は57歳,男性。1996年8月上旬に近医歯科にて抜歯後,顎下部の疼痛,腫脹が出現した。同年8月13日に近院を受診し糖尿病を指摘された。同病院に入院後,血糖のコントロール中に腫脹の増加,複視,顔面神経麻痺が出現したが,頭蓋内に異常がみられず耳鼻咽喉科に転科した。悪性腫瘍の疑いもあり当院を紹介され,同年9月2日に初診した。右頸部から顔面にかけての腫脹と圧痛,右眼球突出がみられた。硬口蓋から軟口蓋,鼻腔底から鼻中隔にかけて粘膜の壊死を認めた(図1)。また,右滲出性中耳炎,左慢性中耳炎を認めた。脳神経障害は右側でIII IV V1,2VIVII,左側でV1〜3)VIに麻痺があった。右上深頸部に軟らかく可動性のあるリンパ筋を触知した。眼底所見上,糖尿病性網膜症があった。初診時HbA1Cが12.7%と糖尿病のコントロールが不良であった。CRPが12.5と強い炎症があった。鼻汁の細菌検査ではMRSAが検出されたがムコール真菌は検出されなかった。
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