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はじめに
鼻アレルギーでは抗原により感作が成立し(induction phase),そのため産生された抗原特異的IgEと鼻粘膜に侵入した抗原との局所免疫反応が生じる(effector phase)。その結果,effector cellであるところのマスト細胞や好酸球からヒスタミン,ロイコトリエン,トロンボキサンなどのメディエーターが放出され,これにより受容体から直接あるいは神経系を介して症状発現組織である粘膜下腺組織,血管系を刺激し症状を発現している1)。鼻アレルギーの治療はこのアレルギー反応の流れのどの点を抑えるかということである。現在,日本では多くの抗アレルギー剤が開発,発売され内科,耳鼻科,眼科を問わずに,鼻アレルギー(花粉症)の治療に使用されている。この抗アレルギー薬の効果はトシル酸スプラタストを除き,細胞から放出されるメディエーターをその中心におき,effector cellと症状発現組織にその作用を生じさせている。薬剤の副作用はあるが一般的に適性使用においては安全と言え,このため一般医家に多く使用されている2)。
この章で解説する免疫療法は,成立した抗原による感作をいかに減少させるかという点で減感作療法とも呼ばれている。この免疫療法(減感作療法)は抗アレルギー薬の効果発現のポイントと異なり,アレルギー反応のinduction phaseとef-fector phaseの中間にそのポイントがあると考えられる。われわれはこの免疫療法がアレルギー疾患に対する根本的な治療法であり,唯一治癒させ得る治療法とその作用のポイントからも考えている。アレルギー治療の基本は抗原の除去,抗原からの回避であるが,完全に行うには無理があり,再び抗原曝露が生じると症状が出現する3)。鼻アレルギーで最も治療に抵抗する症状は,一般的には鼻閉である。これは可逆性変化であるはずのアレルギー反応が,即時相の反応の繰り返しか,あるいは遅延相の反応の結果から粘膜の浮腫,腫脹が非可逆性に存在し,鼻アレルギーの難治化という概念が一般的になった。この鼻閉を外科的な処置以外で臨床的に改善させる可能性が高いのも免疫療法の特徴であろう。
免疫療法は1915年にCooke4)によつて米国に紹介されて以来現在まで続いている治療法で,日本より欧米でその評価が高い5)。また,日本においては通年性アレルギーに対し,その高い治療効果が認められているが6),スギ花粉症に対しての効果が低い。これは市販のスギ治療用エキスの力価が低いためと考えられている。アンケートでは免疫療法終了後,花粉症の症状は約60%が軽快したと答えている7)。
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