鏡下咡語
メスと包丁
夜久 有滋
1
1夜久耳鼻咽喉科医院
pp.630-632
発行日 1997年8月20日
Published Date 1997/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901645
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「先生,ふぐの免許を取ってみたら?今年はウチのMも受験するから,一緒に試験を受けなさいよ」馴染の割烹の主人のこの言葉から事は始まった。
7年前に栃木県がんセンターを辞し,千葉県野田市で開業した。40歳であった。頭頸部外科を専門としていた身が,外来診療のみとなり寂しさを感じ始めた頃,生来の魚好きである私に妻がメスを包丁に持ち替えての魚料理を勧めてくれた。以来,この割烹の主人に手ほどきを受けながら大小種々の魚をこなしてきた。この割烹は開業して3月ほどして見つけた店で,ふぐ割烹を標榜しており,ふぐ以外にも美味しい料理が多く,医師会の先生方も多数利用されていた。主人は自分の店を飛び込みで見つけて定着した私を気に入り,開院祝いをしなかった私が,開院一周年記念の会を貸し切りでお願いしたところ,以後は支払いが翌月一括払いとなった。M君はここで5年前から修業している青年である。
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