海外トピックス
英国医療事情
原田 勇彦
1
1Addenbrooke's病院耳鼻咽喉科
pp.984-986
発行日 1994年11月20日
Published Date 1994/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901042
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日本と英国
文明開化以来,日本にとって英国は数多くの分野で指導的役割を果たし,日本の発展に多大の影響を与えてくれた国である。その英国も100年前の栄華を誇った全盛期を過ぎると凋落の一途を辿り,代わって米国次いで日本が繁栄の頂点に達した。海に囲まれた島国という地形的な類似に加えて,島国根性に由来する性格的な類似点も持っているように思われる日本と英国であるが,現在の日本は100年前の英国と極めてよく似た経済的,文化的状況にあるという指摘がなされている。だとすればこれからの日本には英国が歩まざるを得なかったような凋落が待ち受けているのであろうか。今日の日本の政治的混乱を見るにつけ,今でこそ日本と類似の腐敗が進みつつある英国政界であるが,100年前にはもっとしっかりした政治体制を持っていたと思われる英国でも免れることのできなかった没落を,果たして日本はうまく逃れることができるであろうかと不安になってくる。
このように日本にとって歴史的な関わりも社会的な影響も大きかった英国であり,また医学の諸分野でもかつては著名な研究が数多く発表された英国であるが,現在の医療状況となると日本ではあまり知られていないのが現状である。筆者は昨年(1993年)9月より英国Cambridgeに留学の機会を得た。そこで見た医療そのものは日本とそれほど違う訳ではないが,医療体制があまりにも日本とは異なっているのを見た。そこで今回は筆者の知り得た限りでの英国医療事情の一部を報告したいと思う。
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