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Küttner Tumorについて
谷垣内 由之
1
1獨協医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.853-861
発行日 1994年10月20日
Published Date 1994/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900994
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はじめに
1896年,南西ドイツ,チュービンゲンの医師H.Küttnerは,顎下腺に悪性腫瘍を思わせる腫瘤を生じた2名の患者の外科的治療を行い,2名とも炎症によるものであった例を報告した1)。これが今日Küttner Tumorあるいは,慢性硬化性顎下腺炎と呼ばれ認識されている疾患の最初の報告であった。彼の報告がドイツ語であったためか,その後の2回の世界大戦の関係か,Küttner Tumorの名称はドイツ語系の成書では,Walter BeckerらのHals-Nasen-Ohren-Heilkunde2)のような小さなものにでも記載されているが,英語系では記載がない。日本医学の源流がドイツにあるためか本邦の耳鼻咽喉科学書には記載のあることが多く,耳鼻咽喉科医・口腔外科医,特に唾液腺を専門とする者にはよく知られた疾患名である。
本疾患については,病理学者のG.Seifert3)が総説的な論文を出しているが,原因との関係,特に唾石について反対の意見を述べる者もいて混乱がある。また近年の症例報告をみると当初のKüttnerの報告からみて,やや異なる例も報告されており,疾患概念についても問題があるように思われる。本論説においては,当科で行った顎下腺摘出手術例の中から数例を呈示し,原典との比較においてKüttner Tumorとの関係を考え,いくつかの問題点を提起しようと思う。
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