連載エッセイ 【Klein aber Mein】・1
下鼻道対孔造設不要論
浅井 良三
1,2,3
1兵庫イアーバンク
2神戸大学
3兵庫医科大学
pp.752-754
発行日 1994年8月20日
Published Date 1994/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900977
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私どもが大学耳鼻科教室に入局した頃には,まず最初に受け持たされる患者は併合性副鼻腔炎で上顎洞根本手術の指導をうけます。
和辻式上顎洞根本手術(京都大学では和辻式を行います)の術後下鼻道対孔からの創液が多く吸引装置を必要とし,時には洞汚染のためか創液が悪臭を帯びカメレオン水で洞洗浄をしなければならぬ症例もありました。手術が稚拙であったかも知れませんが洞粘膜は厳重に摘出したつもりですし,術後の処置も感染させる手落ちはなかったのに何故感染するのか,対孔からの上顎洞創液の排泄が不十分のためか,上顎洞粘膜の取り残しのためかその原因はわかりませんでした。他の副鼻洞篩骨洞前頭洞の手術をやってないからそれらからの感染も考えて,鼻内的に篩骨洞開放,鼻前頭管開大などの手術を上級職員がやってくれていました。この考えにもとついて併合性副鼻腔炎の手術が後にPolysinectomy (多洞手術)またはPansinectomy (全洞手術)に発展したと考えています。
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