トピックス 環境と耳鼻咽喉科
低周波と耳鼻咽喉科—特に内耳に対する影響について
吉田 昭男
1
1警友総合病院耳鼻咽喉科
pp.17-22
発行日 1993年1月20日
Published Date 1993/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900663
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はじめに
振動と最も関連の深い耳鼻咽喉科領域は耳,ことに内耳と中耳であろう。そこで今回のテーマは「振動と耳鼻咽喉科」であるが紙面の都合上,低周波振動が内耳,中耳に及ぼす影響について文献的に考察することにする。低周波が人体に及ぼす影響については可聴域の騒音のそれに比べて最近まであまり関心が寄せられていなかった。しかし新幹線,高速道路,航空機の発達,増加により,これらの引き起こす低周波が周辺の住民に及ぼす影響について段々関心が高くなってきている。
低周波の定義に関しては,U.S.EnvironmentalProtection Agencyによれば16Hz以下をさしているが1),1973年パリにおける国際会議で0.1Hzから20Hzと決められた。しかし20Hz以上でも人体に影響を及ぼす可能性があることから1980年のアールボルグ(デンマーク)での国際会議では1Hz〜100Hzに範囲を広げることが提唱されている。また人体に影響があると考えられていた音圧はロケットとかジェットエンジンが引き起こす140dB以上の低周波であったが,最近ではもっと低い音圧の低周波も人体に影響がある可能性が示唆されている。低周波が人体に及ぼす影響としてこれまであげられているのは1)酒に酔ったような感じになる,2)作業がうまくいかなくなる,3)聴力の低下の可能性,4)眼振,平衡感覚の低下,などである。
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