鏡下咡語
眼振の魅力と不思議
徳増 厚二
1
1北里大学医学部耳鼻咽喉科
pp.464-465
発行日 1992年6月20日
Published Date 1992/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900555
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眼球の律動的な,持続する往復運動である眼振は,生体の神秘を伺わせる。温度刺激眼振の記載をはじめとする一連の研究でノーベル賞を獲得したR.Barany以後,温度限振や,回転後眼振で,生体の平衡機能を調べる時代がながく続いたが,それを,故福田精先生は,バラニーの呪縛といわれた。眼振は,1方向へ動く風景を眺める時の視運動性限振,頭部を回転した時の回転眼振が,本来の姿であり,迷路の半規管刺激による回転眼振も,動く対象を見るために働いているというのである。複雑な神経機構が完成された,われわれの体で,どこかに異常が起こると,奇妙な現象が観察される。病的な自発眼振,頭位眼振がその部類に入る。多くの奇妙な病的眼振が報告され,その発現機序についても説明がされているものがあるが,説明出来ないものも少なくない。
自発眼振は,正面遠方視で見られる眼振であり,固視させない状態で出現する。フレンツェル眼鏡をかける,暗所開眼・閉眼・遮眼でENGで記録,赤外線カメラの利用などで,観察される。前庭性眼振の視覚あるいは固視抑制を除外するためである。
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