特集 外来診療マニュアル—私はこうしている
I.症状の診かた・とらえ方—鑑別のポイントと対処法
5.耳鳴
村井 和夫
1
1岩手医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.21-25
発行日 1991年11月5日
Published Date 1991/11/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900368
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
耳鳴は外耳,中耳,内耳および後迷路を含む聴覚系を中心とした障害によって生ずる症状の一つと理解されている.しかし聴覚経路は非常に複雑な構造をもち,数多くの部分から構成されており,その障害部位を明らかにすることは容易ではない.また耳鳴を訴えて受診する患者の耳鳴の症状も多種多様で,音色,大きさ,苦痛度も一定ではない.同様に聴覚系の障害によってみられる難聴は,種々の聴覚検査法が確立されており,その障害部位あるいは病態をとらえることが可能であるが,耳鳴は未だその性状を測定する方法が確立しておらず,また耳鳴は痛みなどと同様に性格的,心理的要因などがその側面に少なからず関与していることが推測され,診断,治療の面で研究が遅れていることは多くの報告に見られるほぼ一致した意見である.したがって,他の多くの疾患にみられるように症状と原因疾患とが密接に関連した所見をとらえることは難しく,耳鳴の性状から原因疾患を直接関連づけて診断することは困難である.
しかし耳鳴は何らかの疾患の一症状として現われてくるものであり,その背景にある重篤な疾患を見逃さないように慎重にしかも計画的に検索を進めることが重要である.
以下に耳鳴の一般的臨床所見と診断手順の概略について述べる.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.