特集 外来診療マニュアル—私はこうしている
I.症状の診かた・とらえ方—鑑別のポイントと対処法
4.急性難聴
小田 恂
1
1東邦大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.18-20
発行日 1991年11月5日
Published Date 1991/11/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900367
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急性難聴という用語について
どのような種類の難聴であれ,正常聴力の状態から自覚的に難聴を意識するようなときは,文字どおり急性難聴と考えてさしつかえないが,臨床的にみると聴力低下の程度が非常に軽微な場合には急激に聞こえが悪くなったという意識がないのが普通である.たとえば,老人性難聴のような例では始まりは急性難聴として発症するにもかかわらず,その程度が非常に軽いため自覚的にはほとんど難聴を意識せず,ある程度進行した段階で初めて難聴を自覚するので,臨床的には急性難聴と呼ばないのが一般的である.
同様に,伝音性難聴症例の場合は,後に示すような例外はあるが,一般に難聴の進行速度が緩徐なためと難聴以外の症状が顕著なために急性難聴と呼ばれることはほとんどない.このように,急性難聴という用語はある程度限定された時間内に生じ,かつ明確な聴力低下(たとえば聴力図の上で明確に閾値上昇が認められるような)を示すような症例の場合に用いられる.
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