- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
何気なく手に取るとズッシリとしたその重量感に圧倒されます。書籍というものは手に持ってその厚みや重さを感じるだけで読む前から何だか充実して知識が増えたような錯覚にとらわれるものです。表紙も快い上質な手触りで,指先の触感からその内容の豊かさが伝わってきます。ページをめくると豊富な写真やイラストが読者を読む気にさせるでしょう。その触感こそが電子書籍にはない知識のリアリティというものではないでしょうか。このリアリティこそAO法の真骨頂かと思います。
さてAOCMFによる本シリーズの第1巻は,2012年に原書が上梓され,日本語版が2017年に発行されました。第2巻となる本書は,原書が2020年に上梓されたのち,このたびの日本語版の発刊となったわけです。外傷と顎矯正手術における「頭蓋顎顔面骨の内固定」が主題であった6年前の第1巻と比べると,そのタイトルも『AO法骨折治療 アドバンスト頭蓋顎顔面手術—腫瘍,骨矯正,外傷』と進化し,内容が格段に充実し,実践的になっています。その目的は,「第1巻に示した基本原則/基本手技を超えたより困難な課題を取り扱うのに必要な点をカバーし(中略)包括的な治療計画を可能にする」という「はじめに」の言葉に端的に表現されています。章立てにつきましても,骨材料,下顎手術,中顔面手術,矯正手術,と分かれ,それぞれの章に第1巻にはなかった再建手術の項目を設けて充実させ,さらに「画像診断と手術計画のテクノロジー」を加えて,最新のナビゲーションやカスタムメイド技術も取り入れています。最後の章には「顔面同種移植の原理と技術」という将来を見据えた技術に触れており,痒いところに手が届く充実ぶりです。もちろん前巻同様,カラフルで見やすい豊富なイラスト,写真が挿入され,読者の理解を助けています。根拠となる文献や図書も付記され,エビデンスを伴う最先端の教科書と言えるでしょう。ページをめくるだけで手術をしたくなる衝動に襲われると言えば言い過ぎでしょうか。
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.