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世界的に有名な鼻科手術の術者であり,かつ研究者,教育者としても第一人者であるオーストラリア・アデレード大耳鼻咽喉科のP. J. Wormald先生が著した『Endoscopic Sinus Surgery』第4版が,アデレード大へ留学し,Wormald先生から指導を受けた北大・鈴木正宣先生らによって和訳され,2020年に『ウォーモルド内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術』として出版された。原著には副鼻腔解剖構造や内視鏡下鼻副鼻腔手術に関する多くの要点が記されており,世界標準の知識や手術手技について言語の壁を越えて理解することができる。しかし,実臨床における実践となると,原著に記されている副鼻腔構造や前頭洞への手術アプローチの理解を容易にするBuilding blockコンセプト,手術テクニックを実際の症例でどのように活用するのかが重要となる。また,Wormald先生が実践する鼻科手術において,原著には書き切れない細かなテクニックや術前CT読影による手術プラン,周術期管理における要点も存在している。そのような実践的な内容をWormald先生から直接教わるチャンスはそう多くない。そこで本書『ウォーモルド直伝 内視鏡下鼻副鼻腔手術トレーニング』が発刊された意義は大きい。
本書ではBuilding blockを実臨床に応用する過程が豊富な画像やイラストを用いて詳細に著されている。術前CT読影から副鼻腔構造を症例ごとに詳しく理解し,前頭洞排泄路の最拡大に向けて手術プランを立て,それを実践するというプロセスがわかりやすく図示されている。特にこの600点を超える手術イラストは単なる内視鏡映像の模写ではなく,術者の視点から意識して見えている,あるいは見るべき術野が描かれているのが特徴であり,とても理解しやすい。また副鼻腔3Dモデルごとに副鼻腔構造の違いや術中におけるポイントが丁寧に解説されており,本書を見ながら実際に同じ副鼻腔3Dモデルを用いて手術トレーニングを行うことでWormald先生の指導を追体験することができる。数学を学ぶときに公式を覚えた後で実践的な演習問題を繰り返し解いて実力を培うのと同じように,本書で学んだ後に繰り返し実践をすることで,鼻科手術に必要な知識や手技を身につけられる。
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