増刊号 患者・家族への説明ガイド—正しく伝え,納得を引き出し,判断を促すために
Ⅰ.耳と聞こえのこと
医師・医療者から説明しておきたいこと
耳鳴の音響療法を行う前に
森 浩一
1
1国立障害者リハビリテーションセンター病院
キーワード:
部分遮蔽
,
補聴器
,
注意の向け方
,
聴覚過敏
,
うつ
,
音響外傷
Keyword:
部分遮蔽
,
補聴器
,
注意の向け方
,
聴覚過敏
,
うつ
,
音響外傷
pp.58-59
発行日 2018年4月30日
Published Date 2018/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411201592
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説明のPOINT
・耳鳴が「治らない」と患者に言うことは医学的に正確ではなく,また,絶望感を抱かせることがあるので避ける。
・原因を含めて,医学的説明を尽くす。耳鳴自体は心理面以外に他の疾患の原因にはならず,難聴などの結果であることと,耳鳴の大きさとつらさは相関しないこと,つらさを取る治療はあることを説明する。
・①原病の治療,②耳鳴の治療,③つらさへの治療を区別して説明する。
・上記②③としては,薬物療法,音響療法,心理療法が主なものである。
・抗不安薬は耳鳴の音量を下げる効果もある。しかし依存を生じやすいので,原則として長時間作用性のものを,3か月以内で処方する。抑うつがあれば,抗うつ薬も考慮する。他の治療薬は有効率が低い。
・薬物療法中は耳鳴の変化をチェックしがちなため,耳鳴への注意を減らすことができず,音響療法,心理療法の治療の妨げになりやすい。これを説明し,患者に選択させる。
・音響療法は即効性があり,継続すると馴れができ,耳鳴に気がつきにくくなり,つらさも減る。不眠についても有効性が高い。なお,聴覚過敏があればその音響療法を先に行う。
・心理療法としては,耳鳴から注意が逸れればつらくなくなるので,耳鳴を気にしないですむよう環境を工夫し,身体活動を促す(散歩・家事・体操・朗読・歌唱など)。聾症例もこれで対応する。認知行動療法3)(マインドフルネス4)など)の併用で耳鳴から積極的に注意を逸らし,考えの切り替えができる。
・不眠については,睡眠時間ではなく,昼間眠くならなければ睡眠不足でないことを説明する。薬物療法は高齢者では副作用や依存症が多いので,できるだけ音響療法と認知行動療法を優先する。
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