鏡下囁語
牡ライオンCecilの死
上村 卓也
1
1九州大学・耳鼻咽喉科学
pp.445
発行日 2016年5月20日
Published Date 2016/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411201003
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このタイトルの論説は,まずニューヨークタイムズの2015年8月9日号(ウィークリーレビュー)に載った。それによると,ザンビア(アフリカ,そのほぼ中央になるコンゴの南隣)でアメリカ・ミネソタの歯科医,狩猟家に牡ライオンCecilが殺されたというニュースはインターネット上で世界的な反響を呼んだ。野生動物の減少や大規模なゾウなどの密猟が問題になる今日,昔のような大型動物の狩猟を楽しむことはできなくなってきている。しかも,Cecilは普通の動物ではない。この13歳の牡ライオンはジンバブエの国立公園での人気者であり,首輪をつけられており,オクスフォード大学の研究者が2008年以来トラッキングしていて,殺すことは法律で禁じられていた。
しかし,この事件後,アフリカのライオン狩りを制限ないし禁止すべきという話にはならなかった。2週間後のニューヨークタイムズはその後の話として,「トロフィー動物の弁護—ビック・ゲーム・ハンティングが野生動物の保護になるという自然保護活動家の主張」という記事を掲載した。その記事によると,狩猟はアフリカのライオンの減少,1世紀前の20万頭から今の約3万頭への減少の主因ではないという。主な脅威は生息地の減少である。ある狩猟家たちは獲物の生息地を維持する努力によってその保存を助けていると主張する。
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