増刊号 こんなときの対応法がわかる 耳鼻咽喉科手術ガイド
Ⅳ.喉頭・下咽頭の手術
声帯麻痺:声帯内自家脂肪注入術
二藤 隆春
1
1東京大学医学部耳鼻咽喉科
pp.173-177
発行日 2015年4月30日
Published Date 2015/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200608
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症例呈示
症例1
53歳,女性。他院で甲状腺乳頭癌に対して甲状腺亜全摘術,頸部郭清術が施行され,左反回神経が合併切除されていた。術後に出現した嗄声は徐々に改善したものの,1年経過した時点でも声が割れたり,大きな声を出せず,日常生活で不自由を感じていたため受診。職業はなし(主婦)。
初診時,左声帯は副正中位で固定し,膜様部の弓状変形が認められた(図1)。声の聴覚心理的評価はG1R1B1A0S0,最長発声持続時間(maximum phonation time:MPT)は8秒であり,自覚症状を示すVHI-10は28点(40点中)であった。甲状腺手術の際,術創部の違和感がつらかったとのことで外切開による手術を希望せず,喉頭微細手術下で腹部から採取した自家脂肪を左声帯に注入した。術後2か月で声質は安定し,1年後でもG0R0,MPT 19.2秒,VHI-10 9点と良好な状態が維持されている。
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