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Ⅰ.診断
1.背景を知る
嗄声の診断には,ほかの疾患以上に現病歴や既往歴の聴取が重要である。すなわち,性,年齢,音声酷使の有無,喫煙歴などの声帯を取り巻く環境を知ることである。
2.聴診
どのような嗄れ声か,声の変化は嗄れただけなのか,声が低くなったか,高くなったかも重要なポイントである。声帯ポリープやポリープ様声帯では,健常時に比較して音声は低くなるからである。
3.視診
声帯を観察する。声帯は,ほかの臓器とは異なり,発声によりその形態を大きく変化させる。したがって,その観察にも間接喉頭鏡やファイバースコープ,電子スコープなどによる静的状態の観察ばかりでなく,ストロボスコープによる動的状態の観察が必要である。例えば,形態的には声帯ポリープに似ているようにみえる声帯嚢胞では,ストロボスコープによる観察では,声帯ポリープとは異なり,病変部で発声時の粘膜波動が欠如しており,術前の診断に重要である。また,ポリープ様声帯では,発声時に声帯全体の浮腫性病変が不規則にやわらかな波動を示し,癌などの悪性疾患との鑑別にも有用である。
4.機能検査
発声機能検査装置を用いて発声時の声の基本周波数,音圧,呼気流率などの測定を行うことは,術前・術後の音声の改善を評価するのに有用である1)。しかし,そのような装置がなくても最長発声持続時間の測定は簡便に発声機能の一部を評価ができる方法なので,是非,行いたい。
Ⅱ.治療
1.はじめに
手術用顕微鏡を用いて,喉頭のポリープを切除した報告は,1960年のScalcoら2)に始まるといわれている。本邦においては,1966年に斉藤ら3)が先端照明を用いた現在の方法が報告された。原則は,全身麻酔下での喉頭顕微鏡手術であるということは異論のないところであるが,局所麻酔下に間接喉頭鏡を用いた方法4)や撓性内視鏡を用いた方法5),撓性内視鏡下に経口的に鉗子操作を行う方法6)なども報告されている。
しかし,音声改善を目的とする本手術の原則は,病変部分を過不足なく切除し,良好な創傷治癒を目指すということに尽きる。したがって,本稿では,音声外科手術の基本となる,全身麻酔下での喉頭顕微鏡下手術を中心に解説する。
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