特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅶ.炎症・感染症診療NAVI
7.インフルエンザ
林 達哉
1
1旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科
pp.212-216
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102160
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Ⅰ 疾患の概説
インフルエンザは感冒様症状に高熱,強い倦怠感,筋肉痛,関節痛などの全身症状を伴い,毎年,世界中で流行する。非常に一般的な感染症であるが,通常の感冒より重症化しやすく,幼小児における急性脳症や高齢者における二次性細菌性肺炎などを合併すると死亡に至る例があることから,単なる感冒とは区別して対策を立てる必要がある。
インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科に属するRNAウイルスで,ウイルス粒子内の核蛋白複合体の抗原性の違いにより,A型,B型,C型の3種類に分類される。毎年流行を引き起こすのはA型とB型であり,ワクチンもA型とB型に対してのみ製造される。ウイルスは表面に赤血球凝集素(hemagglutinin:HA)とノイラミニダーゼ(neuraminidase:NA)という2種類の糖蛋白からなるスパイク状構造を有する。HAは気道粘膜細胞のレセプターと結合して,細胞内感染を成立させるうえで主要な役割を果たしており,ワクチン成分でもある。NAは宿主細胞内で増殖したウイルスが宿主細胞からウイルス粒子として遊離する際に酵素として作用する。抗インフルエンザ薬である各種ノイラミニダーゼ阻害薬はこの働きを阻害することにより,ウイルスの増殖を抑制する。A型インフルエンザのHAには16種類の亜型(H1~H16),NAには9種類の亜型(N1~N9)があり,その組合わせによりさまざまな動物(ヒト,トリ,ブタなど)に感染することのできる人獣共通感染症の性格を有する。
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