特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅱ.病原体をマスターする
1.細菌・原虫感染症
8)ジフテリア菌
田村 悦代
1
1東海大学付属八王子病院耳鼻咽喉科
pp.109-112
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101827
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Ⅰ 疫学
1948年予防接種法の制定とともに,ジフテリアトキソイドが導入され,1958年には百日咳との混合ワクチンが,1964年には百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチンなどが使用され,ジフテリアの予防に効果を挙げてきた。しかし,一方では近年,ジフテリア患者は激減し,図1に示されるように年間数例が散発的に報告されるだけである。したがって,各医療機関では,ジフテリア患者に遭遇する機会が減り,ジフテリア患者を診察した経験のある医師がほとんどいないことから,適切な診断を早期に行うことが困難となっている。また,細菌学や血清学的診断に必要な知識をもった技術者や選択培地が配置されている検査機関がきわめて少なくなり,診断の遅れが医療現場での早期治療の障害となることが懸念される1)。
1994年に施行された感染症法では,二類感染症に分類され,診断医師の届出が義務付けられている2)。ジフテリアもしくは病原体保有者であると診断した医師は,直ちに最寄りの保健所に届け出る。患者は原則として第二種感染症指定医療機関に入院となるが,無症状者は入院の対象とはならない。また,ジフテリアには疑似症の適用はない。
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