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Ⅰ はじめに
アレルギー反応には,多くのケミカルメディエーターが重要な役割を演じていることが知られている。アレルギー性鼻炎においても局所で産生・遊離されたケミカルメディエーターが,標的細胞に発現している特異的受容体に作用してくしゃみ,鼻汁,鼻閉などの鼻症状を引き起こしている。ケモカイン,サイトカインにて鼻粘膜を刺激しても鼻症状は生じないが,ケミカルメディエーターは直接的に鼻症状を引き起こすため,ケミカルメディエーターの特異的受容体拮抗薬ないしケミカルメディエーター遊離抑制薬は,鼻アレルギー治療薬として既に臨床に広く用いられている。アレルギー性鼻炎患者に対する鼻粘膜単回抗原誘発後の鼻腔洗浄液中のケミカルメディエーターの経時的濃度変化は,ヒスタミンとプロスタグランディンD2が即時性かつ一過性の上昇を示すのに対し1,2),ブラディキニン1,2),システイニルロイコトリエン2),血小板活性化因子(PAF)3),トロンボキサンA24)では即時性のみならず抗原誘発4~8時間後の遅発相にも再上昇を示すことが確認されている(表1)。つまり,上気道において,抗原刺激後の肥満細胞の活性化と脱顆粒は,即時性かつ一過性であるのに対し,遅発相では,好酸球を中心とする浸潤細胞の活性化が引き起こり,ロイコトリエンなどの脂質メディエーターの放出が起こっているものと推定される。上気道においては,抗原刺激により表2に示す細胞からこれらのケミカルメディエーターが産生遊離され,特異的受容体を介して作用するものと考えられている。アレルギー性鼻炎では薬物療法が主であるが,鼻噴霧用ステロイド剤以外の日常臨床で用いられるほとんどの鼻アレルギー治療薬はケミカルメディエーターに拮抗する薬剤が主となっている。本稿では,これらケミカルメディエーターのアレルギー性鼻炎の鼻症状発現への関与につき,これまでの報告を整理し,その推定される役割について概説する。
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