鏡下囁語
メニエール病をシェークスピアと人間行動から読み解く
高橋 正紘
1
1横浜中央クリニック,めまいメニエール病センター
pp.649-653
発行日 2009年8月20日
Published Date 2009/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101485
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Ⅰ.メニエール病患者の実態とスモン病の教訓
メニエール病の病因はいまだに解明されず,治療方法も確立していない。以前,メニエール病患者と地域住民にアンケート調査を実施し,性,年齢の対応した185名の両群間で比較したことがある。日常の過ごし方,ストレス源,気分発散手段に大きな違いはなかったが,行動特性(行動の癖)の項目で大きな違いがみられた。親や上司の期待に沿う,嫌なことも我慢する,徹底的にやる,熱中しやすい,事前にいろいろ心配しやすい,イライラしたり怒りやすいが,メニエール病患者群で地域住民に比べ男女ともに著しく強かった(統計学的に危険率0.1%で有意)1)。メニエール病患者はなぜこのような行動をとるのか,を考えてみたい。
筆者はメニエール病の調査・診療を目的に,2006年5月に週2回のめまい専門診療を開始し,丸3年が経過した2)。この間に受診したメニエール病患者304名の発症誘因をみると,記載された247名で多忙44.9%,職場ストレス19.4%,家庭トラブル17.8%,家族病気・死10.1%,睡眠不良・不足8.5%で,以下,介護,育児,子ども受験,隣人トラブル,孫の世話,友人トラブル,不明,子どもと同居,子ども家庭のトラブルであった(重複記入あり)。これらは疲労,我慢,心労を強いる要因である。仕事熱心で,周到に準備し,嫌なことを我慢し,周囲の期待に沿う人々が,これらの状況に置かれ発症する―患者像―が浮かび上がる。
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