Japanese
English
特集 女性と耳鼻咽喉科疾患
2.めまいと女性
2.Vertigo in female
石川 和夫
1
,
殷 敏
1
,
ナカリン アグンスィー
1
Kazuo Ishikawa
1
1秋田大学医学部感覚器学講座耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
pp.293-298
発行日 2008年4月20日
Published Date 2008/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101230
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Ⅰ.はじめに
めまいは臨床的に訴えられる症状として日常遭遇することが多く,耳鼻咽喉科外来患者の10%強を占める。従来めまい患者はやや女性に多いとされてきたが,その理由や疾患別の頻度における性差などに関して総合的に検討した報告は少ない。
めまいは身体の平衡維持機構に何らかの障害が生じて発症するもので,原因疾患の病態そのものに男女差はなく共通するのであるが,性差に基づく生体の恒常性維持の機構の違いが,特定のめまい原因疾患の病態を修飾したり,女性特有のめまいの病態を形成したり,発症頻度の差として認められることがある。自験例を中心にこの辺の問題について検討を加えてみる。
われわれのめまい患者2,052例の臨床統計によれば図1に示すように,小児と超高齢者を除いて,全年齢層を通じてめまい患者は女性にやや多い。これは,男女の人口差を超える開きがあるのと他のめまい患者の臨床統計をみても同じ結果である1)。発症ピークは60歳代で一峰性である。
さて,女性の一生は,妊娠の可否とかかわって大きくホルモンのバランスが変化する(図2)2)。この妊娠可能年齢に伴う女性体内の変化が女性のめまいの特徴を形成すると考えられる。
そこで,われわれの最近の症例を含む女性めまい患者を,表1に示すように生殖期(月経周期の規則的な45歳まで:ここでは,エストロゲン量の一定になる20歳以降に絞った),更年期(生殖期から生殖不能期への移行期で月経が不規則になって閉経になる55歳まで),更年期以降に分けて,トータル1,343名の女性めまい患者を対象に統計をとって検討してみた。
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