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Ⅰ はじめに
頭頸部癌の治療において超選択的動注化学放射線療法(同時併用しているので最近はこのように呼称している)(以下,動注化学療法と略す)は標準的な治療とはいえないし,われわれが考えているような必要性・重要性はまだ十分には認識されていないと思われる。しかしながら頭頸部癌学会(旧頭頸部腫瘍学会)における演題で,単純にタイトルに動注という名称が入った発表を検索すると,第19回頭頸部腫瘍学会(1995年)では一般演題351題中5題であった。その後1996年(3題/334題),1997年(5題/334題),1998年(6題/261題),1999年(8題/356題),2000年(7題/347題)とほとんど変化のない状態であったが,2003年の第27回頭頸部癌学会で“頭頸部癌における急速動注化学療法”として初めてシンポジウム(6題)として取り上げられ,さらにミニシンポジウムを含めた一般演題359題中に動注関連演題が11題あり(計17題),以後2004年(24題/390題),2005年(24題/359題),2006年(25題/401題)と増加し,本年開催された第31回頭頸部癌学会においては一般演題55群中4群(30題/403題)を占めていた。当然のことながら投稿論文も急激に増加している。わが国では多施設共同研究が行われがたく,欧米で行われるような大規模なrandomized trialは困難といわざるをえないが,われわれとしてはこれらの学会発表や原著の積み重ねが非常に重要だと考えている。
川崎医科大学耳鼻咽喉科では頭頸部癌の治療において,これから述べる過去の治療成績をかんがみ,まず治療成績の向上を目ざして1992年から超選択的動注化学療法を開始した。最近では治癒率の向上および生存率の向上とともに,形態および構音や咀嚼・嚥下などの機能を温存して社会復帰を目ざしたQOLの向上がさらに強く求められるなか,本療法をさらに推進していくつもりである。本編では当科における本療法の歴史および現況に触れるとともに,動注化学療法を施行しても頸部転移巣が制御されずに不幸な結果を招いた過去を振り返りながら,現在行っている頸部リンパ節転移巣に対する頸部郭清術の施行基準と結果を中心に述べてみる。
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