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I.はじめに
「電子カルテ」という言葉は一般的に使われるようになっており,社会的にも定着してきている。しかし定義に関しては,2003年に日本医療情報学会の見解や1996年の日本保健医療福祉情報システム工業界の定義などが出ているものの,現時点では公的な定義はない。米国では1991年に米国電子カルテ協会が定義を出しているが,日本では1999年に規制緩和の一環として旧厚生省からの通知とガイドラインがある程度である(表1)。そのため,以前から学会でも対象とする内容が一致しないまま議論されるという問題点が現在も存在する。本稿では一応「電子カルテ」とは「受診の動機となった疾病にかかわらず,診療施設を訪れた人に関係する情報を記録し二次利用も考慮して保存しておくもの」というものとする。
旧厚生省から1999年に出された通知・ガイドラインには電子カルテという言葉はなく,「診療録等の電子媒体による保存」と表現されている。そこには基準としての3条件(真正性,見読性,保存性)が記載されており,ガイドラインには各項目の説明がなされている:1.真正性(入力者と作成責任者とが異なる場合は,入力者・作成責任者の識別・認証が行われること,入力内容の確定・虚偽入力等の防止など),2.見読性(保存された内容を必要に応じて肉眼で見読可能な状態に容易にできること,そのための情報管理など),3.保存性(法令等で定められた期間にわたって,真正性を保ち,見読可能にできる状態で保存されることなど)。これらを各施設の自己責任のもとに行うことになっている(電子カルテなどを製作したメーカーではない点に注意が必要)。なお,この通知・ガイドラインの全文は,http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1104/h0423-1_10.htmlに掲載されており,短いので電子カルテについて考えたり論議したりするうえで一読するとよい。
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