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人工内耳手術による難聴の克服―現況と将来展望
内藤 泰
1
1神戸市立中央市民病院耳鼻咽喉科
pp.689-699
発行日 2005年9月20日
Published Date 2005/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100185
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Ⅰ はじめに
人工内耳手術は,開発当初から現在までに種々の改善が加えられ,また以前は手術適応外と考えられていた蝸牛骨化などの困難例,低年齢乳幼児,重複障害児などにおいても一定の有効性が確認されて,適応も拡大しつつある。一方,人工内耳の効果は,末梢の蝸牛神経だけでなく,中枢聴覚路,特に聴皮質の機能に大きく左右される。先天性高度難聴児における言語習得の臨界期の存在はそのもっとも顕著な例で,十分な聴覚入力がないままに臨界期を過ぎると音声言語の習得がきわめて困難になるが,この限界を規定しているのは発達期における聴皮質の可塑性である。
このように,人工内耳の医療では,実際に手術操作が加わる中耳,内耳とともに聴覚情報処理を行う大脳皮質の発達と可塑性も,その結果を左右する重要な因子となる。本稿では,以上の点を含め,人工内耳手術による難聴克服の現況と将来展望について概説する。
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