特集 囊胞性疾患
4.側頸囊胞
河田 了
1
1大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.377-380
発行日 2005年5月20日
Published Date 2005/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100136
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Ⅰ.発生・成因
頭頸部を形成する原基である鰓性器官(branchial apparatus)の発生は,胎生第2週で始まり,分化して胎生第6~第7週で完成する。鰓性器官は,外胚葉由来で将来体表面へと分化する4対の鰓溝(branchial cleft)とそれに対応する内胚葉由来の鰓囊(branchial pouch),およびそれらにより分けられる中胚葉由来の5つの鰓弓(branchial arch)から構成されている。1対の鰓溝と鰓囊を鰓裂と呼んでいる。本疾患は胎生期の鰓溝が遺残することにより発生するといわれている。そのため,発生学的見地から立てば,鰓囊胞(branchial cyst)という名称が妥当であるが,多くは側頸部に発生することから,側頸囊胞(lateral cervical cyst)という名称は臨床的に理にかなっている。また,発生原因として,鰓囊起源ではなくリンパ節内に上皮が封入されることによって発生するという説1)もあることからも,側頸囊胞という名称のほうがよいのかもしれない。
本疾患は発生学上,閉鎖腔(囊胞)のほかに体表あるいは体腔(咽頭腔)に瘻を伴うことがある(側頸瘻)。体表と体腔の両者に開口を有するものを完全瘻,一方のみに開口しているものを不完全瘻という。
側頸囊胞は第2鰓裂由来のものが最も多い。これは第2鰓弓の発育が早く,第5鰓弓へ覆いかぶさるように発育するため,第2鰓溝が閉鎖腔になるためである。次に多いのは,第1鰓裂由来のものである。第1鰓裂由来と第2鰓裂由来の側頸囊胞の割合は,ほとんどが第2鰓裂由来という報告もあるが2),約25%が第1鰓裂由来という報告もある3)。
![](/cover/first?img=mf.1411100136.png)
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.