特集 聴力改善手術
7.外リンパ瘻
池園 哲郎
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.162-172
発行日 2005年4月30日
Published Date 2005/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100127
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Ⅰ.病態と診断
外リンパ瘻は外リンパの漏出によって難聴,耳鳴,めまい,平衡障害など様々な症状を呈する疾患である。これらの症状の原因は,瘻孔からの外リンパ漏出が膜迷路に変化を及ぼすためである。この意味で外リンパ瘻は膜迷路の疾患である1)。漏出部位は,前庭窓の輪状靱帯,蝸牛窓膜,microfissure,fistula ante fenestramなどが考えられている。
原因は,後天性,先天性(奇形に伴うもの)に大きく分かれる(表1)2)。後天性はさらにアブミ骨手術など耳科手術に伴う医原性,直達外力〔(頭部外傷,鼓膜・耳小骨外傷)〕,介達外力〔中耳圧変化(気圧外傷),労作時の脳脊髄圧の変化,音響外傷〕に分けられる。歴史的には,先天奇形に伴う症例やアブミ骨術後の感音難聴症例で最初に外リンパ瘻が報告され,次いで直達外力による症例が報告された。介達外力に伴うものや明らかな原因がないいわゆる「特発性外リンパ瘻」は,比較的新しい疾患概念である。文献2)には,先天性の外リンパ瘻,ならびに直達外力に伴うもの,医原性のものは確立された疾患であるが,介達外力によるもの,何ら誘因の見当たらない特発性は論議を呼ぶ疾患概念であると記載されている。実際の症例においては,例えば外傷のエピソードがあっても外リンパ瘻かどうか診断に苦慮する症例も少なくない。これは臨床的に確立した外リンパ瘻の確定診断法が存在しないためである。この問題についてはあとで論ずる。
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