特集 緑内障診療ガイド—今日の戦略
Ⅱ.治療の実際
4.難治性緑内障治療の実際
無硝子体眼の治療
山川 良治
1
1久留米大学医学部眼科学教室
pp.251-254
発行日 2002年9月10日
Published Date 2002/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907929
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はじめに
近年,硝子体手術は,器具の進歩,術式の改良により適応が広がり,広く行われるようになってきた。手術対象としても無硝子体眼が増加しつつあると考えられる。無硝子体眼に緑内障が発症する場合,硝子体手術以外にさまざまな手術が施行されていることが多く,そのため発症には原疾患だけでなくさまざまの因子やメカニズムが考えられ極めて複雑である。また手術既往眼であるため,結膜瘢痕だけでなく,硝子体腔が房水に置き換わっていることから房水の組成や房水循環動態が有硝子体眼と異なっており,一般的に行われる緑内障治療の効果が期待できないことも考えられる。
一方,evidence-based medicine(入手可能で最良の科学的根拠を把握したうえで,個々の患者に特有の臨床状況と価値観に配慮した医療を行うための行動指針)と定義される診療指針の作成となりうる無硝子体眼の緑内障の治療では,最も質が高いといわれる無作為化対照臨床試験の論文はないため,疑問点にかかわる要素,データを収集して決断分析,費用効果分析を試みる方法しかなかった。具体的には今回の原稿を書くにあたっては,PubMed,医学中央雑誌で,glaucoma,vitreous,vitrectomy,緑内障,硝子体手術などのkey wordで調べたが,無硝子体眼の緑内障は硝子体手術の合併症か,難治性緑内障のなかの一部,あるいは血管新生緑内障の中で記載されていることが多かった。しかし,これらの文献をできる限り集めるとまた膨大になるので,今回は症例を多く扱っている論文を参考にし,同時に自験例から大まかな診療方針の作成を試みたと考えていただきたい。
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