特集 眼科基本診療Update—私はこうしている
2.治療に必要な基本技術
緑内障の治療
術後前房再生不良・脈絡膜剥離に対する治療
沢口 昭一
1
,
早川 和久
1
1琉球大学医学部眼科学教室
pp.258-260
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907082
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
線維柱帯切除術(trabeculectomy:PT)術後の合併症として,前房の再生遅延による浅前房,あるいは脈絡膜剥離は比較的高頻度に観察される。通常,術後浅前房は一過性で,いずれ改善することが多いが,問題となるのは角膜内皮と水晶体前面が接触する場合である。こうなると角膜内皮数は間違いなく減少する。また水晶体は接触した部位で混濁を生じ,さらには白内障が一層進行するため,多くの場合,不可逆的な視力低下をきたす。
かつてマイトマイシンC(MMC)を用いないPTでは強膜半層フラップをゆるめの2針で縫合していたが,術後の浅前房は,経過中必ず遭遇する現象であった。しかしほとんどが一過性であり,完全な前房消失を伴わない場合は特に処置を行わず,アトロピン点眼と,比較的安静を保ってもらうことで済んだ。
しかし筆者らがMMCをPTに用い始めたころ,初期の数例では,上記の縫合を行ったところ,前房が再生せず,非常な困難を経験したことがあった。本稿では最近経験した症例を中心に,筆者らが行っている処置,治療法について述べる。
なお,術後浅前房は,その程度により次の3つに分類される1)。
grade 1:周辺虹彩が角膜内皮に接触しているが,前房は形成されている。grade 2:瞳孔辺縁まで虹彩は角膜内皮に接触しているが,瞳孔領でかろうじて前房は形成されている。grade 3:瞳孔領においても角膜内皮は水晶体前面に接触し,虹彩は押しつぶされており,完全に前房消失の状態。grade 2,3では,角膜内皮障害,白内障発症,進行の危険性が高まっており,早急な治療が必要となる。
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.